口唇裂・口唇口蓋裂のある赤ちゃんを産んだら「これからどんな生活になるんだろう」「わたしに育てられるかな」という不安はありませんか?
わたしはとても不安でした。
初めての赤ちゃんでわからないことだらけなのに口唇口蓋裂というプレゼントつきなのですから、不安に思うのも当然です。
わたしの場合、出産直後から1回目の口唇裂の手術(生後3ヶ月)までは毎日本当に大変でした。
同じく口唇裂・口唇口蓋裂のある赤ちゃんを出産された方の参考になればと思い、何が大変だったかを次の2つの時期に分けて紹介することにしました。
- 生後6日目までの入院生活
- 退院後(生後7日目)から生後3ヶ月までの日常生活
この記事では、口唇口蓋裂の赤ちゃんを出産した日から退院する生後6日目までの、入院中大変だったことについて書いています。
- 妊婦検診で胎児に口唇裂があると言われた方
- 口唇口蓋裂がある赤ちゃんを出産された方
- 身近に口唇口蓋裂の赤ちゃんがいる方
- 口唇口蓋裂をもって生まれた方
口唇口蓋裂の赤ちゃんを出産
破水から42時間後に口唇口蓋裂の赤ちゃんを出産
わたしは妊娠9ヶ月のときに、妊婦検診のエコーで胎児の口唇裂がわかりました。
>>【エコー写真あり】妊娠9ヶ月にエコーで胎児の口唇口蓋裂が判明!夫婦で備えたこと
もともと経腟分娩を予定していて、赤ちゃんの口唇口蓋裂がわかっても分娩方法に変更はありませんでした。
出産予定日の9日前、里帰り出産で帰省していたわたしは、特にすることもなくのんびりとお昼寝をしていました。
すると、何か水のようなものが股からちょろ~っと出てくる変な感覚が…。
破水はもっとバシャー!っと羊水が出てくるものだと思っていたので、それが破水なのか自分ではまったく判断がつきませんでした。
病院に電話して状況を伝えると、念のため入院セットを持って診察に来てくださいとのこと。
下着にパッドをあて、荷物を持ってタクシーに乗り込み病院へ。
内診台で先生に診てもらっているときに、今度は大量の水がバシャーン!と出てきました。
本格的な破水でした。
でも子宮口はがっちり閉じていて、赤ちゃんも全然下りてくる気配がありません。
バルーンが挿入され、陣痛促進剤も打ちました。
徐々に痛みが増してきて、陣痛にもだえながら人生初の幻覚を見ました…。
そうして破水から約42時間後、ついに経腟分娩で出産!
最後は、赤ちゃんを吸引しながらもう一人の先生がわたしの腹部に乗って赤ちゃんを押し出すという荒業で、なんとか生まれてきてくれました。
口唇裂のある生まれたての赤ちゃんを見て思ったこと
先生はへその緒を切ってすぐ、産まれたてほやほやの赤ちゃんを抱かせてくれました。
赤ちゃんの口元にはエコーで確認した通り口唇裂がありましたが、事前に心構えができていたおかげで全然気になりませんでした。

僕は立ち合い出産をして、赤ちゃんの頭が出てくるのを見たよ。口唇裂を見た第一印象は『こんなもんか~』っていう感じだったかな。僕はふぁみままより先に赤ちゃんの口元を見たから、『口唇裂を見てふぁみままはどう思うかな』ってちょっと気になった。

わたしも口元については『あ、ほんとに口唇裂ある』って事実を確認した程度だった。それよりも『ほかほかしてる!生きてる!本当に赤ちゃんだ~!』っていう感動のほうが大きかったよ。
分娩台の上でわたしの処置が終わったあと、赤ちゃんを抱いて、夫と三人で記念写真を撮りました。
その後、赤ちゃんは看護婦さんに連れられてNICUへ。
わたしは病室へ案内され、「今日は出産初日なのでゆっくり休んでください。明日は、小児科・形成外科・歯科の先生からお話があります。」と説明を受けました。

余談だけど、医大の附属病院だからか研修医(恐らく学生)が何人かいて、分娩中も足元にギャラリーがたくさんいて恥ずかしかった!出産後のお股の処置もしっかり観察されて、モルモットの気分だったよ…。
赤ちゃんについた診断名は『右側完全口唇顎裂』
担当医からは、「右側に完全口唇裂があります。口蓋裂はありませんが、右側の歯茎が裂けています。」と説明がありました。
歯茎が裂けている状態を『顎裂(がくれつ)』と呼ぶらしく、ついた診断名は『右側完全口唇顎裂(みぎがわかんぜんこうしんがくれつ)』でした。
右側の鼻がかなり潰れていて、裂けた歯茎が口唇裂の間から表に出ている状態。
(生まれて間もない頃の写真は後ほど載せます。少々お待ちくださいね。)
妊娠中は、赤ちゃんがどんな顔で産まれてくるか不安でたまりませんでした。
でも夫に似た優しい顔立ちの赤ちゃんを見て、それまでの不安は一瞬でどこかへ!

『この子の口元、なかなか興味深い構造になってる~!』と思ったのが第一印象。口唇裂も全部ひっくるめて、息子の存在が愛しくてたまらなかった。
一方、愛しいと思うからこそ、赤ちゃんの口唇裂を間近で見るたびに『ごめんね、ごめんね』という気持ちがより一層強まったのも事実です。
いま振り返ると、産後は精神状態がかなり不安定になっていました。
悲しいわけではないのに、勝手に涙が出てきて止まらないということが頻繁にありました。
検査・授乳問題・母子同室不可でつらかった入院生活
入院中はつらいこと・大変なことがいろいろありました。
- 息苦しそうな赤ちゃんの姿を見るのがつらい!
- 授乳がうまくいかなくてつらい!
- 産後の体(下半身)が痛すぎて、歩くのがつらい!
- 赤ちゃんと離ればなれでつらい!
- リラックスできる時間がなくてつらい!
- 授乳に2時間かかって大変!
- NICUと病室が遠くて、1日に何度も往復するのが大変!
- 小児科、歯科、形成外科の先生から話を聞いて、頭の中を整理するのが大変!
- 搾乳がけっこう疲れる!
- 搾乳器の洗浄&消毒が地味にめんどくさくて大変!
中でも特に記憶に残っていることを、これから次の3つに分けて紹介します。
- 小児科・形成外科・歯科の話とホッツ床の型取り
- 口唇裂・口唇口蓋裂がある赤ちゃんの授乳問題
- 口唇裂・口唇口蓋裂があると母子同室は難しい?

つらかったり大変だったりすることは多かったけど、夫や看護婦さんに話を聞いてもらえたから乗り切れた!一人で抱え込むのが一番良くないよ。
小児科・形成外科・歯科の話とホッツ床の型取り
産後2日目、わたしは個室に呼ばれ、小児科・形成外科・歯科の先生から違う時間帯にそれぞれ話を聞きました。
息子は、産まれてすぐに小児科の検査、形成外科の検査、歯科の検査を受けていたようです。
まず、小児科の先生からは黄疸や心臓の異常などはないという説明を聞き、次に形成外科の先生から赤ちゃんの口元の症状について図解で説明を受けました。
その後、歯科の先生から歯茎が裂けているのでホッツ床(※)を作らないといけない、という話があり、さっそく息子を連れてきてホッツ床の型取りをしました。
看護婦さんに抑えつけられ、口の中に型を押し込まれ、息子は大泣き。
必要なことだとは言え、大人に抑えつけられて泣き叫ぶ声を聞くだけで、胸が張り裂ける思いでした。
わたしが息子の泣き声を聞いてポロポロ涙をこぼしていたら、 「泣いたほうが口を大きく開けるから型取りしやすいんですよ~」と看護婦さんがフォローしてくれました。
口唇裂・口唇口蓋裂がある赤ちゃんの授乳問題
ホッツ床ができあがるまで、それはもう大変な毎日でした。
唇と歯茎が裂けているため授乳がうまくいかなかったのです。
初めての授乳でおっぱいをあげてみましたが、空気がもれて吸えませんでした。
そこで、搾乳した母乳を哺乳瓶にうつして飲ませる練習を始めました。
しかし哺乳瓶用乳首も、4種類試しましたがどれも上手に吸えません。
飲みたいのに飲めない息子。うまく飲めないからすぐお腹が減って泣きます。
そのたびにわたしは看護婦さんに呼ばれ、産後で痛む下半身を引きずってNICUまで行きました。
NICUにつくと、直母で授乳する練習をしてから哺乳瓶でミルクをあげます。
1回20~30mlほどの量ですが、吸う力が弱いので飲み切るのに2時間ほどかかっていました。
授乳が終わると、また体を引きずって病室に戻り、ベッドの上で搾乳をします。
搾乳が終わると搾乳器を洗って消毒。
ふぅ~っと一息ついた瞬間、また授乳で呼ばれます。
ゆっくり休める時間がなく、体力的にも精神的にもかなり辛かったです。
夜中は3時間おきに搾乳し、その搾乳した母乳を看護婦さんに預けて授乳をお願いしていました。

口唇口蓋裂があるほうの鼻が潰れているから、呼吸がしにくくてすごく苦しそうだった。授乳中は、口呼吸しながら息苦しそうに少しずつミルクを飲んでいたよ。その姿を見るたびに『息ができなくなって死んじゃったらどうしよう』という不安で、胸が押し潰されそうだった。
口唇裂・口唇口蓋裂があると母子同室は難しい?
わたしが入院していた病院では、産後2~3日目から母子同室が可能だと聞いていました。
でも授乳がうまくいっていないから母子同室は難しいと言われ、わたしはショックで大泣き!
6人部屋だったため、他のママさんたちが母子同室で赤ちゃんと一緒に過ごしていることが羨ましくて仕方ありませんでした。
入院4日目に、とうとう我慢できなくなり看護婦さんに泣きつきました。

母子同室じゃないことがすごくストレス!いつ授乳で呼ばれるかわからないから、お手洗いにもゆっくり行けない。退院後にわたし1人でも赤ちゃんの面倒が見られるように、入院中に生活リズムを掴んでおきたい!
必死にそう伝えると、看護婦さんが先生に相談してくれたのか、翌日(入院5日目)から母子同室の許可が出ました。
のちのち、先生から「赤ちゃんの哺乳力が弱くてNICUで見る必要があると思っていたけど、赤ちゃんもお母さんもがんばっている様子を見て母子同室に許可を出しました。」と聞きました。
それを聞いてすごく嬉しかったことを覚えています。
出産後、あなたがもし母子同室でないことにすごくストレスを感じるようであれば、一度看護婦さんや先生に相談してみてください。
病院の方針や赤ちゃんの状態にもよりますので必ず母子同室になれるかわかりませんが、気になることや自分の希望はしっかり伝えることをおすすめします。

母子同室がもう嬉しくて嬉しくて。赤ちゃんと一緒に寝起きできることが幸せでたまらなかった!暇さえあれば、ずーっと寝顔を見ていたよ。写真もたくさん撮った!
母子同室になるとNICUと病室を往復する辛さから解放されたので、体の負担が減りました。
いつ呼ばれるかわからない、赤ちゃんにすぐ会えなくて辛い、というストレスもなくなり、この頃から精神的に落ち着いてきたような気がします。
口唇裂・口唇口蓋裂があっても一緒に退院できた
授乳が軌道にのらず、赤ちゃんの体重は減る一方。
そのため赤ちゃんは一緒に退院できないと言われていました。
ところが、母子同室になった頃から哺乳瓶でうまく飲めるようになってきて、少しずつ体重が戻り始めました。
うまく飲めると言っても50mlを飲み切るのに相変わらず1時間半ほどかかっていましたが、まったく飲めないという状態は脱していました。
結果として一緒に退院することができ、退院時の赤ちゃんの体重は出生時から146g減っただけで済みました。
一緒に退院できるとわかったときは本当に嬉しかったです。
「退院翌日から形成外科と歯科の通院が始まります」と先生から聞いたときは愕然としましたが…(笑)
病院では、小さな赤ちゃん1人のために、たくさんの大人たちが力を尽くしてくれました。
分娩台の上で産まれた瞬間から、小児科・形成外科・歯科の先生方が素早く連携して動いてくださいました。
スピーディに適切な検査や処置をしてくださったことに、本当に感謝しています。
まとめ:授乳に2時間かかって休む暇なし!体力的にも精神的にも辛かったけど赤ちゃんの可愛さで乗り切れた。
出産は喜ばしいことですが、口唇裂・口唇口蓋裂のある赤ちゃんを出産したママにしかわからない不安やつらさもあります。
この記事では、わたしが口唇口蓋裂の赤ちゃんを出産してから退院するまでの、入院中につらかったこと・大変だったことを紹介しました。
何といっても一番大変だったのは、授乳です。
数十mlのミルクを飲ませるに約2時間かかり、搾乳と搾乳器の洗浄などで約1時間、1回の授乳で合計3時間かかっていました。
授乳サイクルは3時間なので、一息つく間もなくまた次の授乳でNICUに呼ばれました。
産後の体の痛みと睡眠不足が合わさり、体力的にも精神的にもすごくつらかったです。
でも、赤ちゃんを抱いたときに感じる幸せはそのつらさを上回るものでした。
入院中は、先生たちの話を聞き、看護婦さんが指導してくださる通りに動き、体の痛みに耐えながらせっせと授乳し、1日1日を赤ちゃんと必死に過ごしていました。
親族の面会対応や沐浴練習などもあって、こんなに忙しくて長いと感じた1週間は初めてかもしれません。
つらい、大変、といろいろ書きましたが、赤ちゃんは本当にかわいいです。
「これからどんな生活になるんだろう」「わたしに育てられるかな」という不安は、日々の忙しさにかき消されます。
しんどいことは沢山ありますが、旦那さんや看護婦さんなど周りの人に頼りまくってください。
そして、赤ちゃんをたくさん愛して、口唇裂があるお顔の写真もたくさん撮ってくださいね。
退院後の生活については、近日公開予定です!
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