わが家の長男は、口唇口蓋裂をもって生まれてきました。
赤ちゃんに口唇口蓋裂があるとわかったのは、妊娠9ヶ月に里帰り先の大学病院で妊婦検診を受けたときです。
驚きとショック、そして『きっとわたしのせいで口唇裂になったんだ…赤ちゃんごめんね』という自責の念に駆られました。
家で1人になると口唇口蓋裂になった原因を探っては落ち込み、声を殺して泣いたことも。
エコー写真を見るたび『どんな顔で産まれてくるんだろう?ちゃんと愛せるかな』と不安が押し寄せたり…。
でも、出産とともにそれまでの不安は嘘のように吹っ飛びました!
産まれた赤ちゃんはとても可愛く、口唇裂のある顔が愛しくて愛しくてたまらなくなったほどです。
生後3ヶ月で口唇裂の手術をし、5才になった今では口唇裂の面影は全然ありません。
産まれて間もない頃は授乳がうまくいかず心配していましたが、それも一時のこと。
息子は元気いっぱいに育ち、お友だちと一緒に走り回って遊ぶ日々を過ごしています。
わたしと同じようにエコーで赤ちゃんの口唇裂・口唇口蓋裂がわかった方のために、少しでも不安が薄れるようにと、経験談を書くことにしました。
この記事では、妊婦検診で胎児の口唇口蓋裂がわかった経緯と、告知を受けてから夫婦で備えたことについて書いています。
出産したあとの経験談はこちらをご覧ください。
>> 口唇口蓋裂の赤ちゃんを出産。入院中、産後すぐから大変だったこと
- 妊婦検診で胎児に口唇裂があると言われた方
- 身近に口唇口蓋裂の赤ちゃんがいる方
- 口唇口蓋裂をもって生まれた方
妊娠9ヶ月、3Dエコーで赤ちゃんの口唇口蓋裂が判明
妊娠32週目のときに口唇口蓋裂の疑いが
妊娠検査薬で妊娠がわかってから、家の近くにある個人産院で妊婦健診を受けていました。
エコーも内診も毎回パパッと終わり、無口な先生からは「はい、順調です」の一言だけ。
いつも何の説明もなく、初めての妊娠で赤ちゃんのことをいろいろ知りたかったわたしには少し物足りませんでした。
『妊婦健診ってこんなものなのかな?』と疑問に思いながらも、妊娠31週目までそこに通院していました。
里帰り出産を予定していたので、妊娠9ヶ月にあたる32週目のとき、夫と一緒に京都にある大学病院の産科を受診しました。(わたしは京都出身です。)
大学病院では胎児超音波スクリーニング検査といって、とても丁寧に、時間をかけて胎児の全身をしっかり診てくれました。
「問題ないですね、元気で大きめの赤ちゃんですよ。男の子で間違いないと思います。」
と言ったあとに、「ちょっと待って…これ気になりますね。もしかしたら口唇裂があるかもしれません。ほら、ここ。」と、先生が言いました。
3Dエコーで見せてくれましたが、わたしも夫も初めての3Dエコーだったため正直どこがどうなっているのか全然わかりませんでした。(それまで通っていた個人産院は2Dエコーでした)
いまエコー写真を見返すと、しっかり口唇裂が見えています。
「もしかしたら影になっているだけかもしれないので、また次回しっかり診てみましょう。」とのことで、エコー写真をたくさんくれて検診は終了しました。
妊娠34週目ではっきりと口唇裂を確認
妊娠9ヶ月目の妊婦健診は2週間に1回です。
妊娠34週目に再度しっかり胎児の口元を見てもらいました。
すると、今回は前回より口元がはっきり見えて、口唇裂であることが確定!
このときの3Dエコーでは、わたし達夫婦にも口唇裂がはっきり見えました。
そのときのエコー写真がこちらです。
ちなみに、このとき口唇裂は確認できましたが、口蓋裂は生まれてみないとわからないとのことで不明なままでした。
補足:エコーで見る口唇裂の特徴
口唇裂の特徴として、胎児の唇が縦に裂けている状態が見られます。
ただ、素人からすると、よっぽど鮮明に写っていない限りエコー写真を見ても口唇裂があるかないかを明確に判別することは難しいです。
人中(じんちゅう:鼻と上唇の間の溝)が影になって、口唇裂がなくても唇が裂けているように見えることもあるようです。
また、写る角度によっては、口唇裂があっても口唇裂がないように見えたりします。
3Dエコーと2Dエコーでも、見え方が違います。同じ妊娠週数で比較してみました。
左の画像は長男の3Dエコー(口唇裂あり)、右の画像は三男の2Dエコー(口唇裂なし)です。
この3Dエコー写真はわりとはっきり口唇裂がわかりますが、右の2Dエコーは口元がどうなっているか全然わかりません。
エコー写真を見てもし「口唇裂があるかも」と気になる場合は、検診のときに先生に言うと口元を重点的に見てもらえると思います。
先生からの口唇口蓋裂の説明とわたし達の気持ち
先生からの口唇口蓋裂の説明
エコーが終わった後、診察室で先生から口唇口蓋裂について説明を受けました。
- 特定の原因はまだ解明されていない
- 約500人に1人の割合で発症する
- 2人目も口唇口蓋裂で生まれる可能性が高い
- 2人目もそうだった場合、1人目より症状が重い場合がある
先生はこういった内容を淡々と話し、それをわたし達は割と冷静に「はい。はい。」と聞いていました。
続けて、こんなことも言っていました。
- 生まれるまで重症度がわからないから、今は何も準備しなくて良い
- 赤ちゃんはお母さんの不安やストレスを察するから、あまり心配しすぎないように
- 口唇口蓋裂は、お母さんのせいではない
口唇口蓋裂のことを聞いたわたし達の気持ち
先生の話を聞き終わったわたしは、一度にいろんな気持ちが溢れてきました。

『まさかわたし達の子が…』という衝撃と、『あぁやっぱり』という気持ちだった。2人目も口唇口蓋裂になる可能性が高いって聞いて、さらにショック!

確かに、『まさか自分たちの子どもにこんなことが起こるなんて。』っていう気持ちは起こったけど、500人に1人なら相当な確率だから、そういうこともあるよねっていう感覚だったかな。
まぁでも、『実は誤診で、生まれてみたらきれいなもんでした!』っていう妄想はしたことあるよ!
当時、わたしは2日連続徹夜や残業96時間といった無茶な働き方をしていて、ストレス大・寝不足・食生活最悪、という状態での妊婦生活でした。
わたしのせいでお腹の赤ちゃんがおかしくなったらどうしよう!と思い、事前にいろいろ調べていたので口唇口蓋裂については知っていました。
夫に「もし口唇口蓋裂で生まれてきたらどうしよう」と相談したこともあったので、夫も事前知識は持っていました。
ただ、それでもやっぱり、わたし達の初めての赤ちゃんが口唇口蓋裂かもしれないと知った瞬間の『ごめんね、赤ちゃんごめんね…!』という申し訳ない気持ちはとても大きいものでした。

先生に「お母さんのせいではない」と言われても…
赤ちゃんは自分のお腹の中で育ってるから、『自分のせいだ』という自責は拭えなかった。
「心配しすぎないように」って言われても、心配するし、不安にもなるよ…。
ただ、わたしはその時感じたその気持ちを、夫には伝えませんでした。
なぜなら、同時に「レア感」を楽しむような気持ちも湧いてきたからです。
病院からの帰り道、わたし達はこんな会話をしました。

500人に1人ってすごいね!大当たりやね!

うんうん!なんか特別な感じするね!
お互いに少しはしゃいだ感じで、一緒に「レア感」を楽しんでいました。
夫がポジティブな人で良かった、と心底思いました。
わたしは妊娠初期の頃からエコー写真をアルバムにして、先生が言った言葉や自分の気持ちを書き込んでいました。
この子が大きくなったらこのエコーアルバムを渡すつもりです。
検診のたびに喜んだり心配したり、お腹にいたときからあなたをずっと愛していたんだよ、という気持ちが伝わればいいなと思っています。
胎児の口唇口蓋裂がわかって出産までに備えたこと
この頃、わたしは産前休暇に入っていて毎日時間を持て余していました。

赤ちゃんの口唇裂について今は何も準備しなくていい、って先生言ってたけど、本当に何もしなくていいのかな。
せめて知識だけでも増やしとこう!
どうしていいかわからないなりに、こんなことをしていました。
- 口唇口蓋裂の本を買って読む
- ネットでいろいろ検索
- 区役所に相談して通いやすい病院を探す
- 両家の親に報告
口唇口蓋裂の本を買って読む
『こどもの口唇裂・口蓋裂の治療とケア』メディカ出版 (定価2,400円+税)

この本は、4年経った今でもたまに読んでいます。
絵や写真が多くて理解しやすく、けっこう参考になることが書いてあります。
胎児が成長過程で口唇口蓋裂になる仕組みもわかりやすく書いてあります。
どんな手術が必要か、手術前後はどんなことをするか、といった内容はとても参考になりました。
かかりやすい合併症や言葉の発育について頭の片隅に入れておくと、その後の成長過程で「あ、これか」という気づきがありました。
口唇口蓋裂の症状や原因をネットで検索
ネットでは主にこんなことをしました。
- どんな症状か画像で見ておく
- 口唇口蓋裂になる原因を検索
「口唇口蓋裂」で検索すると、いろんな種類の口唇口蓋裂の画像がたくさん出てきます。
完全口唇裂、不完全口唇裂、両側口唇裂、片側だけの口唇裂、口蓋裂ではないが顎裂がある、…などなど。
初めて見たときはけっこうショッキングな印象を受けました。

リアルな画像を見ておいたおかげか、産んですぐ赤ちゃんの顔を見たとき、口唇口蓋裂のことは全然気にならなかった!
むしろ「なんてかわいい赤ちゃん!」って思ったよ。
胎児の口元が形成されるのは妊娠初期のため、妊娠初期に葉酸不足だったり母体にストレスが大きくかかっていたりすると、奇形の可能性が高くなるといった記事も読みました。
ただ、先生からの説明にもあったように、特定の原因はわかっていないようです。
こればかりはもう考えても仕方がないので、原因を追求することはやめました。
区役所に相談して産後も通いやすい病院を探す
赤ちゃんが産まれたあと、どこの病院を受診すれば良いのか全然わかりませんでした。
誰に相談して良いかもわからず、とりあえず区役所の「妊娠・子育て中の相談窓口」のようなところに電話してみました。
こんなふうに、事情、用件、希望をまとめておくと冷静になれて相談しやすかったです。
- 事情:現在妊娠中で、胎児に口唇裂があることが判明している
- 用件:通いやすそうな所にあるおすすめの病院を教えてほしい
- 希望:口唇口蓋裂の子をしっかり診てくれて、手術が上手な先生がいる

口唇口蓋裂のコミュニティがあることも教えてもらいました。
わたしは参加しませんでしたが、そういった情報も教えてくれる区役所がありがたかったです。
電話して良かった〜。
何年も長期的に通院することになるので、実績があって信頼できる先生がいることはもちろん、自宅から通いやすい場所に病院があることも重視していました。
何カ所か大きな病院を教えてもらえたので、リストアップしてGoogleマップで場所を調べ、2カ所にまで絞っておきました。
夫と相談してこの2カ所から病院を選び、今もそこに通院しています。
その病院では、生後3ヶ月のときに1回目、4歳のときに2回目の口唇口蓋裂の手術を受けました。
付き添い入院やかかった費用についてもまとめているので、良ければこちらもご参考ください。
赤ちゃんに口唇口蓋裂があることを両家の親に報告
お腹の赤ちゃんに口唇口蓋裂があることを、両家の親には事前に伝えておこうと夫婦で決めました。
わたしの両親は京都にいるので直接会って報告し、夫の両親は九州にいるためメールで報告しました。
両家の両親とも、「産まれてから大変だと思うけど、いまは元気に産まれてきてくれることを祈っているよ!」と言って受け入れてくれて、安心!
産まれた後にいきなり口唇裂の写真を見せるとびっくりさせてしまう可能性があったので、産まれる前に伝えておいて良かったなと思っています。
まとめ:出産までに夫婦でできることは「心」の準備
妊娠32週目で口唇口蓋裂かもしれないとわかり、妊娠34週目ではっきりと口唇裂を確認しました。
そのときのわたしは自責の念が大きかったですが、夫がポジティブなので少し気持ちが和らいだことを覚えています。
産科の先生は、産まれるまで何も準備しなくて良いと言いました。
「物」の準備はしませんでしたが、本を読んだりネットで調べたり、わたし達なりに「心」の準備をしました。
不安になることもありましたが、案ずるより産むが易し、です。
産まれた赤ちゃんは、口唇裂が気にならないくらいかわいいですよ。
妊婦検診で、赤ちゃんが口唇口蓋裂と告知された方の参考になりましたら幸いです。
もし気になることや質問などあれば、お気軽にコメントくださいね。
医学に関しては素人ですが、わたしの経験がお役に立てるなら嬉しいです。
出産したあとの経験談はこちらをご覧ください。
>> 口唇口蓋裂の赤ちゃんを出産。入院中、産後すぐから大変だったこと
>> 口唇口蓋裂は次の子にも遺伝する?2人目妊娠中に心がけたこと
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